2019年冬の旅《パリ編》①バスに乗って

リヨンからパリへと移動です。
当初、SNCFのTGV(新幹線みたいなやつね)利用のつもりだったのですが、ストライキの呷りを食らって、空の便へとこれまた変更をした次第。

リヨン・パール・デュー駅からローヌ・エクスプレスに乗って、リヨン・サンテグジュペリ空港へ。そこからパリのロワシー空港へ。トランクをピックアップし、それをガラガラと転がしながら、移動です。
ストライキのせいでRERはいつ出発するのか皆目わからないので、この度もバス利用、と決めていました。

バス乗り場に到着すると、ちょうどリヨン駅へと向かうバスの姿が見えました。おお、ラッキーな。急いでバスチケットを購入し、乗車待ちの列(といっても並んでいるのは4~5人ですが)の最後尾に落ち着きました。乗車の開始にはまだ少し猶予があるようで、バスの扉は開いてはいません。この時点で20時ちょっと前。うまく行けば21時には宿に落ち着けます。よしよし。

しばらくしてバスの扉が開いて、乗車が始まりました。

先頭にいたのは、初老の紳士。とんとんとん、とステップを登っていきましたが…、そこから列が動かなくなりました。

あれれ?と思っているうちに、運転手氏の荒々しい声が飛んできました。…どうやら、モメているようです。
耳に飛び込んでくる切れ切れの単語から察するに、釣り銭がないとかどうとかで、モメているようです。先頭の紳士が高額紙幣を出してしまったのでしょうか。

うわ。もしかしてえらい機嫌が悪いのか、運転手氏。ちらっと覗き込むと、大柄で太めの運転手氏と先頭の紳士がかなり言い合っていました。

そんなんで、10分ほど経過したでしょうか。どういう決着を見たのかはいまいちはっきりしませんが、とりあえず列はふたたび進みだしました。

ところで、ワタクシの一人前には、50代とおぼしきアジア系のマダムがいて、この方(便宜上マダムAと呼びます)が、順番が巡ってきても、スマートフォンの画面を見つめたまま、微動だにしないのです。

『あの…』

と声をかけると、マダムA、「どうぞ、お先に」といった感じのジェスチャーでワタクシを促すのですね。

固辞する云われもないので、さっさとタラップを登りました。ワタクシは先にバスチケットを購入していて、それを提示するだけだったので、運転手氏から特に何を云われるでもなく、すとん、と座席に着きました。

それから何人かの人が乗ってきて、先ほどのマダムAがバス車内に足を踏み入れました。

ワタクシは、はやくバスが出発しないかなぁ、と思ってぼんやり窓外を見ていたのですが、ふと気づくと、なんだか云い争いになっているようです。

運転手氏「ですから、チケットを提示していただかないと」
マダムA「電子チケットをスマートフォンに保存したんだけど、今探したら、見つからないのよ」
運転手氏「理由はどうあれ、チケットのない方は乗れません」
マダムA「でも、確かに買ったのよ」

なんかそんな感じのやり取りでした。売り言葉に買い言葉、というのでしょうか。だんだん、二人ともヒートアップしていき、しまいめには、

「おりろ!」
「おりないわよ!」
「じゃ、チケット見せろよ!」
「確かに買ったけど、見つからないのよ!」

…×10回くらい、喧嘩ごしのやり取りが続きました。

やがて、バス車内の他の乗客も、だんだんイライラしてきて、

「はやくバスを出発させろよ」

だの、

「(マダムAに向かって)迷惑なんだよ。さっさと降りろよ!」

だの、バス車内にも怒号が飛び交いました。

うーむ。こりゃえらい騒ぎになってきたな…。と思っていたら。

バスの奥のほうから60代後半~70代と思しき赤毛(カツラかも)の高齢の女性(便宜上マダムBと呼びましょう)が、つかつかつか、と罵りあう二人のところにやってきて、

マダムB「あなたね。あなたのおかげでみ~んなが迷惑してるの。判らない?」

とこれまた喧嘩ごしの説教を始めました。もちろんこれにも、「私、チケット確かに買ったもん!」ときっちり反論するマダムA。

今度はマダムAとマダムBとの間で「おりろ!」「おりないわよ」合戦が始まりました。

泥沼、とはこのことを云うのでしょうか。
「おりろ!」と「おりないわよ!」の応酬が50回ほど続いたころ、ついにマダムBが実力行使に出て、マダムAの小ぶりなトランクをがっ、と持ち上げ、開いたままの扉から外へ放り投げました。

火に油、とはまさしくこのことでしょうか。
マダムAは、怒り心頭、と云った体で、
「何すんのよ。この××××(自主規制)!私のキャリーバッグ、戻しなさいよ」と叫び、マダムBに掴みかかりました。
マダムBも黙ってはいません。互いに胸倉を掴みあったまま、またぞろ最前の「おりろ!」「おりないわよ!」合戦がさらにヒートアップ。

バス車内の他の乗客もエスカレートして、怒号と罵りの嵐となりました。
そんななか、バス会社の職員でしょうか。そんなような制服を着たおじさんが2人ほど乗り込んできて、どうにか争うマダム二人を宥めようとしましたが、埒があかず、ついに外に向かって、

「警察を呼べ!」

と叫びました。
掴み合い、髪の毛を引っ張りあっていた二人のマダムでしたが、何かの拍子に離れると、どうしたことか、マダムBのほうが怒りも露わに鼻を鳴らしながら、ドスドスとバスを降りていってしまいました。

さて、その後は、再び運転手氏とマダムAの「おりろ!」「おりないわよ!」バトルの再開です。第二ラウンド(第三ラウンドかも?開始のゴングがその場にいたみんなの脳内に鳴り響いたことでしょう。

えんえんと、無益な言い争いが続きました。
「チケットを見せろ」と云えば「見つからない。でも確かに買った」と返し、「おりろ」と云えば「おりないわよ」と返ってくる。ひたすらこれの繰り返し。

…まさしく無間地獄、ですね。

しかし、それからしばらくして、バス職員と思しき人たちがもう2名乗り込んできて、4人がかりでマダムAを説得、というかやんわりと、でも有無を云わさぬ感じで、バスの外へと連行して行きました。

そうして、ようやくバスは発車できたのですが…、ワタクシが乗り込んでから、実に1時間が経過しておりました。

ああ…。21時には宿に到着しているはずだったのに。腹がへった…。と思いつつ、バスに揺られながら、すっかり暗くなった窓外の景色をぼんやりと眺めたのでした。
KIMG0307.JPG
(画像は、パリのリヨン駅です)

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント